Artist Masami Teraoka
風刺と安らぎ

オアフ島の自然に癒されながら、社会問題を風刺し続けるアーティストの寺岡政美

ソニー·ガナデン
写真
ジョン·フック

寺岡政美さんは、奇抜で独創的な画風で知られるアーティストだ。オア フ東部のワイマナロビーチにある、白い砂浜から数ブロックというのど かな場所にスタジオを持つ彼だが、今でも現代の社会的、政治的問題 を題材とした制作活動に取り組み続けている。彼の作品の多くは、物議 をかもすような衝撃的な作品だ。最近の絵画シリーズは、カトリック牧 師を相手にバトルロイヤルに挑むスキーゴーグルで顔を覆われた女性 たちを描いたもので、教会に蔓延していた性的虐待に対する抗議の意 味が込められている。金色と紅色の豊かな色彩で細部まで詳細に描か れ、衝撃的かつ幻想的な場面を暴くかのように開いた扉が象徴的なこ のシリーズは、10年前からその制作が始まり、2015年にホノルル美術 館で開催された企画展『寺岡政美の三連祭壇画展』で発表された。

それぞれの作品には二つの球形をした閉じた扉が描かれている。そ れは芸術家としての寺岡さんを形成した彼自身のトラウマとなった過去を示している。彼は8歳のとき、広島の原爆を経験している。彼の叔父 は原爆によって崩壊した家の下敷きになり重傷を負ったが、何とか逃 げ出して、瓦礫の中から友人を救った。叔父は裸で血まみれのまま、助 けを求めて彼の祖母の家まで何キロも歩いた。その時、原子爆弾の爆 心直下外にいた寺岡さんは「それは忘れることのできないものだ」と、離 れた場所から見た爆発の瞬間について語る。「その光景は私の脳裏に 永遠に刻まれています」。彼が描く二つの球の一つ目は太陽を表し、そ の水平線の向こうにあるもう一つの球は爆弾を表している。二つの球は ダイヤモンドヘッドとココヘッド、ホノルルの都市に広がる山々の尾根に 覆いかぶさり、ハワイの象徴的な景色と球の間には、宙に浮かんだ広島 の平和の門と桜の花びらが燃え上がっている。

寺岡さんは神戸にある関西外語大学美術科で学士号を取得 後、1961年に米国に移住した。ロサンゼルスでは、オーティス·カレッ ジ·オブ·アート·アンド·デザインに通い、ここでのちに世界的に知られる ようになる彼独特の画風と題材の原型を思わせる作品を生み出してい る。以来、彼は肉体の商品化、国際化、資本主義、エイズの流行、また最 近ではカトリック教会における性的虐待について言及、風刺し、非難す る絵画の制作と展示を続けてきた。ここ数十年間、彼の作品はシュール レアリズムに傾向していたが、彼の作品に見られる東西と西洋の混在す るスタイルは、日本の木版画の影響を受けたフランスの印象派のポー ル·スザンヌや、歴史、民話、風景、官能の世界を独特の作風で描いた日本の浮世絵師で版画家の葛飾北斎といった一世紀以上前のアーティ ストたちの技法にインスパイアされている。

寺岡さんの作品は架空でありながら、現代美術特有のある種の対比 を生み出している。中には、現代社会を映し出すだけでなく、社会全体 の問題について言及している作品もある。「フランシスコローマ教皇は 誠実な人に見えるし、友達にもなれるでしょう。彼を描くことに抵抗はあ りません」という寺岡さんは、Twitterで教皇に連絡を取ろうとしたこと もあるという。一方で彼は、「もしドナルド·トランプの絵を描くくらいなら 死んだ方がマシです」と言い放つ。ここ50年、生活面でも創作活動にお いても衰えをみせない寺岡さんは、ハワイや世界中の一流ギャラリーで 作品を披露し続けている。「私にとって世に作品を送り出すことは、詩を 書くようなものです。それは創造性の自由と個人の自由を守ることを意 味しています。だから続けなくていかなくてはならないのです」と語る。

 *限定期間、 ホノルル美術館でアーティストに会えます。

分け合う:
Close up photograph of The Cloisters Last Supper - Triptych Series

アーティストの寺岡政美氏は、 政治や社会問題を浮世絵で描 いた作品で世界的に有名だ。

Cups of paintbrushes in Masami Teraoka's stuio

マサミ・テラオカさんのスタジオにある絵の具ブラシ

Artist Masami Teraoka

スタジオでのマサミ・テラオカさん

Masami Teraoka. McDonald's Hamburgers Invading Japan/Chochin-me, 1982

寺岡さんは、 大衆受けするシンボルを作品 に取り入れ、国際化や文化に ついて意見している。『マクド ナルドハンバーガー、日本を侵 略』(1982)と題された版画が その例だ。

Masami Teraoka. Green Rabbit Island, 1998

ワイマナロにあるアーティストの自宅から見える「グリーンラビットアイランド」に描かれているマナナアイランドの景色

A close up photograph of a woman's face in The Cloisters Last Supper - Triptych Series

トリプティックシリーズの「修道院での最後の晩餐」のクロースアップ写真

Masami Teraoka. McDonald's Hamburgers Invading Japan/Burger and Bamboo Broom, 1980

『サーティワンのフレーバー、日 本を侵略/本日のスペシャル』、
『マクドナルドのハンバーガー、 日本を侵略/バーガーと竹箒』 と題された水彩画は、寺岡さん によるユーモラスな作品。裏ペ ージ:『緑のラビットアイラ ンド(』1998)の、マナナ島の 風景は、彼のワイマナロの自宅 から見える景色だ。

Masami Teraoka. 31 Flavors Invading Japan/Today's Special, 1980-1982

『サーティワンのフレーバー、日 本を侵略/本日のスペシャル』、
『マクドナルドのハンバーガー、 日本を侵略/バーガーと竹箒』 と題された水彩画は、寺岡さん によるユーモラスな作品。裏ペ ージ:『緑のラビットアイラ ンド(』1998)の、マナナ島の 風景は、彼のワイマナロの自宅 から見える景色だ。

風刺と安らぎ

オアフ島の自然に癒されながら、社会問題を風刺し続けるアーティストの寺岡政美

ソニー·ガナデン
写真
ジョン·フック

寺岡政美さんは、奇抜で独創的な画風で知られるアーティストだ。オア フ東部のワイマナロビーチにある、白い砂浜から数ブロックというのど かな場所にスタジオを持つ彼だが、今でも現代の社会的、政治的問題 を題材とした制作活動に取り組み続けている。彼の作品の多くは、物議 をかもすような衝撃的な作品だ。最近の絵画シリーズは、カトリック牧 師を相手にバトルロイヤルに挑むスキーゴーグルで顔を覆われた女性 たちを描いたもので、教会に蔓延していた性的虐待に対する抗議の意 味が込められている。金色と紅色の豊かな色彩で細部まで詳細に描か れ、衝撃的かつ幻想的な場面を暴くかのように開いた扉が象徴的なこ のシリーズは、10年前からその制作が始まり、2015年にホノルル美術 館で開催された企画展『寺岡政美の三連祭壇画展』で発表された。

それぞれの作品には二つの球形をした閉じた扉が描かれている。そ れは芸術家としての寺岡さんを形成した彼自身のトラウマとなった過去を示している。彼は8歳のとき、広島の原爆を経験している。彼の叔父 は原爆によって崩壊した家の下敷きになり重傷を負ったが、何とか逃 げ出して、瓦礫の中から友人を救った。叔父は裸で血まみれのまま、助 けを求めて彼の祖母の家まで何キロも歩いた。その時、原子爆弾の爆 心直下外にいた寺岡さんは「それは忘れることのできないものだ」と、離 れた場所から見た爆発の瞬間について語る。「その光景は私の脳裏に 永遠に刻まれています」。彼が描く二つの球の一つ目は太陽を表し、そ の水平線の向こうにあるもう一つの球は爆弾を表している。二つの球は ダイヤモンドヘッドとココヘッド、ホノルルの都市に広がる山々の尾根に 覆いかぶさり、ハワイの象徴的な景色と球の間には、宙に浮かんだ広島 の平和の門と桜の花びらが燃え上がっている。

寺岡さんは神戸にある関西外語大学美術科で学士号を取得 後、1961年に米国に移住した。ロサンゼルスでは、オーティス·カレッ ジ·オブ·アート·アンド·デザインに通い、ここでのちに世界的に知られる ようになる彼独特の画風と題材の原型を思わせる作品を生み出してい る。以来、彼は肉体の商品化、国際化、資本主義、エイズの流行、また最 近ではカトリック教会における性的虐待について言及、風刺し、非難す る絵画の制作と展示を続けてきた。ここ数十年間、彼の作品はシュール レアリズムに傾向していたが、彼の作品に見られる東西と西洋の混在す るスタイルは、日本の木版画の影響を受けたフランスの印象派のポー ル·スザンヌや、歴史、民話、風景、官能の世界を独特の作風で描いた日本の浮世絵師で版画家の葛飾北斎といった一世紀以上前のアーティ ストたちの技法にインスパイアされている。

寺岡さんの作品は架空でありながら、現代美術特有のある種の対比 を生み出している。中には、現代社会を映し出すだけでなく、社会全体 の問題について言及している作品もある。「フランシスコローマ教皇は 誠実な人に見えるし、友達にもなれるでしょう。彼を描くことに抵抗はあ りません」という寺岡さんは、Twitterで教皇に連絡を取ろうとしたこと もあるという。一方で彼は、「もしドナルド·トランプの絵を描くくらいなら 死んだ方がマシです」と言い放つ。ここ50年、生活面でも創作活動にお いても衰えをみせない寺岡さんは、ハワイや世界中の一流ギャラリーで 作品を披露し続けている。「私にとって世に作品を送り出すことは、詩を 書くようなものです。それは創造性の自由と個人の自由を守ることを意 味しています。だから続けなくていかなくてはならないのです」と語る。

*限定期間、 ホノルル美術館でアーティストに会えます。

分け合う:
Close up photograph of The Cloisters Last Supper - Triptych Series

アーティストの寺岡政美氏は、 政治や社会問題を浮世絵で描 いた作品で世界的に有名だ。

Cups of paintbrushes in Masami Teraoka's stuio

マサミ・テラオカさんのスタジオにある絵の具ブラシ

Artist Masami Teraoka

スタジオでのマサミ・テラオカさん

Masami Teraoka. McDonald's Hamburgers Invading Japan/Chochin-me, 1982

寺岡さんは、 大衆受けするシンボルを作品 に取り入れ、国際化や文化に ついて意見している。『マクド ナルドハンバーガー、日本を侵 略』(1982)と題された版画が その例だ。

Masami Teraoka. Green Rabbit Island, 1998

ワイマナロにあるアーティストの自宅から見える「グリーンラビットアイランド」に描かれているマナナアイランドの景色

A close up photograph of a woman's face in The Cloisters Last Supper - Triptych Series

トリプティックシリーズの「修道院での最後の晩餐」のクロースアップ写真

Masami Teraoka. McDonald's Hamburgers Invading Japan/Burger and Bamboo Broom, 1980

『サーティワンのフレーバー、日 本を侵略/本日のスペシャル』、
『マクドナルドのハンバーガー、 日本を侵略/バーガーと竹箒』 と題された水彩画は、寺岡さん によるユーモラスな作品。裏ペ ージ:『緑のラビットアイラ ンド(』1998)の、マナナ島の 風景は、彼のワイマナロの自宅 から見える景色だ。

Masami Teraoka. 31 Flavors Invading Japan/Today's Special, 1980-1982

『サーティワンのフレーバー、日 本を侵略/本日のスペシャル』、
『マクドナルドのハンバーガー、 日本を侵略/バーガーと竹箒』 と題された水彩画は、寺岡さん によるユーモラスな作品。裏ペ ージ:『緑のラビットアイラ ンド(』1998)の、マナナ島の 風景は、彼のワイマナロの自宅 から見える景色だ。

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