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ハワイ・ポッターズ・ギルドで陶芸の腕を磨く写真家が語る、ものづくりの喜び

文・写真
ミシェル・ミシナ

ハワイ・ポッターズ・ギルドの入口に掛かった日よけの布には、遅い午後の金色の太陽の光が差し込んでいる。スタジオ内に入り込んだ光が、様々な形をした乾燥中の粘土の作品に降り注ぐ。携帯電話は、乾燥した粘土の目には見えない細かい埃から守るため、鞄やポケットにしまってある。電動ろくろの静かな回転音と途切れ途切れの会話のみ聞こえる空間は、現代世界から離れたようにすら感じられる。 お気に入りのろくろの前に座り、椅子を調整する。昨日は気が散りがちだったが、今日は心が落ち着いている。手の中の粘土がどのような形に変化していくかを考えて、わくわくしている。陶芸は、まずろくろの中心に粘土を置き、固定することから始まる。均等な土台を作るこの作業は、どのような作品を作るにも必要なプロセスであると同時に、陶芸家自身の心を落ち着けてくれる。手が動かなくなり、体が安定するまでゆっくりと呼吸し、この作業に全神経を集中させる。 回転している粘土は、少しの圧力でもすぐに形が変わる。動作が速すぎると、厚さが不均一になってあっという間に壊れ、中心が定まらないと、器の形が歪んでしまう。それには忍耐が何より大切だ。私が最初に陶芸を習ったのは、 インスタグラム上で陶芸家が製作工程を編集した1分間の動画の投稿だった。興味をそそり、瞬時に満足感を得られるビデオは、ついクリックしてみたくなるが、その映像から実際に大きな粘土の塊から繊細な器を成形するために必要とされる微妙な手の動きは、ほとんど伝わってこない。 粘土が固まってできる陶器のように、ハワイ・ポッターズ・ギルドは、ホノルルのアートコミュニティの礎となっている。謙虚で控えめな陶芸家のメンバーたちの中には、1967年の設立以来ギルドに所属している人もいる。彼らは新米の私たちに、道具だけでなく、長年にわたる研究と経験から苦心して得た専門知識を快く共有してくれる。このスタジオは、初心者から熟練のベテランまで、あらゆるレベルの陶芸家の学びの場だ。120人以上いるメンバーの多くは今も、人気のクラスに参加できることを光栄に思い、互いの作業を肩越しに覗き込んでは、新しい技術を習得しようと励んでいる。陶芸家仲間からは、YouTubeよりもはるかに多くのことを学べる。そのおかげで私の腕もだいぶ上達した。 ろくろ台の上を回る粘土の上で手を合わせて固定し、徐々に引き上げる。すると指の間から少しずつ滑り出た粘土が、薄く伸び、背を増すごとに安定を失いそうになる。それでも練習を重ねるうちに、思い描いたとおりのバランスの取れた器を作ることができるようになった。アマチュアの私の手にかかると、正確に測った同じ重さの粘土の塊で花瓶を作っても、似たような形にはなるが、決して同じ大きさにはならない。完璧さを追求する芸術ではないのがせめてもの救いだ。 私が初めて陶芸レッスンを受講したのは今から4年前のこと。陶芸の技を身につけ、個性的な食器を作ってみたくて始めたのだが、心のどこかで、形として永遠に残るものを生み出すことを渇望していた。写真家としての私の仕事は、物事を観察し、それらを視覚的に記録することであり、作品自体は、ほんの一瞬で作成され、大抵は二次元の空間にとどまっている。陶器では、泥から実用的で美しいものを作り出すことができる。これまでに存在したことがなく、私がこの世を去った後も、何世紀にもわたって残る可能性のあるものを作ることができる喜びを知った。写真は一瞬にして形になる一方、陶器は時間をかけてゆっくり作業する必要がある。粘土を使って作業する長いプロセスは、それ自体が創造性を磨くための器のようである。 数週間後、2回にわたる焼成を終えて完成した作品には、作業工程の全てが表れる。急に引っぱったり、気が散っていたり、くしゃみをしたりすると、決して思い通りの形にはならない。陶芸家が「粘土には記憶がある」と言うように、最初の工程でのミスが、後になって表れ、その器の個性となって形に残る。できあがった作品は、各工程での私の感情や衝動、身体的状態が合わさったものだ。一見、ただの茶碗に見えるかもしれないが、そこには全ての動きや場所、時間が刻み込まれている。

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「陶芸では、泥から実用的で美しいものを作り上げ、形のなかったものから、何世紀も先まで形に残るものを
創造することができるのです」と語る写真家のミシェル・ミシナ氏。

Communal Form

Season 7 Episode 4
Watch Episode

粘土には記憶があると言われる通り、最初の工程でのミスが、
仕上がった作品に現れる。

陶器作りで大切なのは、忍耐だ。手の動きが速すぎると、厚さ が不均一になってしまう。

陶器作りは、写真にも似た、訓練が必要なアートだ。

1967年に設立された陶芸スタジオのハワイ・ポッターズ・ギルドは、 あらゆる年齢とレベルの陶芸家のコミュニティを育てている。

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ハワイ・ポッターズ・ギルドで陶芸の腕を磨く写真家が語る、ものづくりの喜び

文・写真
ミシェル・ミシナ
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ハワイ・ポッターズ・ギルドの入口に掛かった日よけの布には、遅い午後の金色の太陽の光が差し込んでいる。スタジオ内に入り込んだ光が、様々な形をした乾燥中の粘土の作品に降り注ぐ。携帯電話は、乾燥した粘土の目には見えない細かい埃から守るため、鞄やポケットにしまってある。電動ろくろの静かな回転音と途切れ途切れの会話のみ聞こえる空間は、現代世界から離れたようにすら感じられる。 お気に入りのろくろの前に座り、椅子を調整する。昨日は気が散りがちだったが、今日は心が落ち着いている。手の中の粘土がどのような形に変化していくかを考えて、わくわくしている。陶芸は、まずろくろの中心に粘土を置き、固定することから始まる。均等な土台を作るこの作業は、どのような作品を作るにも必要なプロセスであると同時に、陶芸家自身の心を落ち着けてくれる。手が動かなくなり、体が安定するまでゆっくりと呼吸し、この作業に全神経を集中させる。 回転している粘土は、少しの圧力でもすぐに形が変わる。動作が速すぎると、厚さが不均一になってあっという間に壊れ、中心が定まらないと、器の形が歪んでしまう。それには忍耐が何より大切だ。私が最初に陶芸を習ったのは、 インスタグラム上で陶芸家が製作工程を編集した1分間の動画の投稿だった。興味をそそり、瞬時に満足感を得られるビデオは、ついクリックしてみたくなるが、その映像から実際に大きな粘土の塊から繊細な器を成形するために必要とされる微妙な手の動きは、ほとんど伝わってこない。 粘土が固まってできる陶器のように、ハワイ・ポッターズ・ギルドは、ホノルルのアートコミュニティの礎となっている。謙虚で控えめな陶芸家のメンバーたちの中には、1967年の設立以来ギルドに所属している人もいる。彼らは新米の私たちに、道具だけでなく、長年にわたる研究と経験から苦心して得た専門知識を快く共有してくれる。このスタジオは、初心者から熟練のベテランまで、あらゆるレベルの陶芸家の学びの場だ。120人以上いるメンバーの多くは今も、人気のクラスに参加できることを光栄に思い、互いの作業を肩越しに覗き込んでは、新しい技術を習得しようと励んでいる。陶芸家仲間からは、YouTubeよりもはるかに多くのことを学べる。そのおかげで私の腕もだいぶ上達した。 ろくろ台の上を回る粘土の上で手を合わせて固定し、徐々に引き上げる。すると指の間から少しずつ滑り出た粘土が、薄く伸び、背を増すごとに安定を失いそうになる。それでも練習を重ねるうちに、思い描いたとおりのバランスの取れた器を作ることができるようになった。アマチュアの私の手にかかると、正確に測った同じ重さの粘土の塊で花瓶を作っても、似たような形にはなるが、決して同じ大きさにはならない。完璧さを追求する芸術ではないのがせめてもの救いだ。 私が初めて陶芸レッスンを受講したのは今から4年前のこと。陶芸の技を身につけ、個性的な食器を作ってみたくて始めたのだが、心のどこかで、形として永遠に残るものを生み出すことを渇望していた。写真家としての私の仕事は、物事を観察し、それらを視覚的に記録することであり、作品自体は、ほんの一瞬で作成され、大抵は二次元の空間にとどまっている。陶器では、泥から実用的で美しいものを作り出すことができる。これまでに存在したことがなく、私がこの世を去った後も、何世紀にもわたって残る可能性のあるものを作ることができる喜びを知った。写真は一瞬にして形になる一方、陶器は時間をかけてゆっくり作業する必要がある。粘土を使って作業する長いプロセスは、それ自体が創造性を磨くための器のようである。 数週間後、2回にわたる焼成を終えて完成した作品には、作業工程の全てが表れる。急に引っぱったり、気が散っていたり、くしゃみをしたりすると、決して思い通りの形にはならない。陶芸家が「粘土には記憶がある」と言うように、最初の工程でのミスが、後になって表れ、その器の個性となって形に残る。できあがった作品は、各工程での私の感情や衝動、身体的状態が合わさったものだ。一見、ただの茶碗に見えるかもしれないが、そこには全ての動きや場所、時間が刻み込まれている。

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「陶芸では、泥から実用的で美しいものを作り上げ、形のなかったものから、何世紀も先まで形に残るものを
創造することができるのです」と語る写真家のミシェル・ミシナ氏。

粘土には記憶があると言われる通り、最初の工程でのミスが、
仕上がった作品に現れる。

陶器作りで大切なのは、忍耐だ。手の動きが速すぎると、厚さ が不均一になってしまう。

陶器作りは、写真にも似た、訓練が必要なアートだ。

1967年に設立された陶芸スタジオのハワイ・ポッターズ・ギルドは、 あらゆる年齢とレベルの陶芸家のコミュニティを育てている。

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