ミシェル・ブロダー・ヴァン・ダイクさんとクリス・リットソンさんにとって、ガーデニングブーツを履いて、裏庭で花の手入れすることが毎朝の日課だ。タンタラス山として知られ、曲がりくねった坂道とそこから望むホノルルのダウンタウンの景色で有名なオアフ島にある山、「プウ・オヒア」の頂上にある二人の庭は 、裏庭というよりもエデンの楽園と呼ぶにふさわしい、珍しい花々や豊かな果樹で彩られた6エーカーの自然林だ。
私が訪れた朝は、収穫日だった。私たちは、二人が飼っているミニチュアハウンドとビーグルの雑種犬、コレアとともに、バケツ6個を手に提げて、ヘリコニアの咲く場所までハイクした。清々しい空気の中、朝露の雫が鮮やかなオレンジ色をしたヘリコニアの花弁に輝やいている。 ブロダー・ヴァン・ダイクさんは「私のベビーたちと呼んでいるのよ」と微笑みながら、咲いているヘリコニアの茎を切り、ブーケに束ねていく。「ヘレコニアは一年中花が咲くわ。だからいつ来てもこうやって迎えてくれて、幸せな気分にしてくれるの」。
二人は「タンタラス・ボタニカルズ」という会社名で、地元の花屋にトロピカルフラワーを卸している。フラワーアレンジメントの注文も受ける。自然環境に近い持続可能な方法で花を栽培する二人の会社は、 現代の花産業において希少な存在だ。「花産業というのは、実はものすごい量の廃棄物が出る産業のひとつなんだ」。リットソンさんいわく、この業界では一般的に、プラスチック、ホルムアルデヒドフォーム、殺虫剤、除草剤、さらには新鮮に見せるための人工着色料などが広く使用されているのだという。「地球に育った花を楽しんでいるだけのつもりが、実際にはそれと引き換えに、生態環境への負担という大きな代償を払っているんだ」。
タンタラス・ボタニカルズでは、保存料を使用しないため、注文を受けた日に花を収穫する。「僕たちが他の業者とは違うのはそこなんだ。だから他では手に入らない、寿命の短くてデリケートな切花を提供することができるのさ」とリトソンさんは説明する。他の島に花を送るには、殺虫剤を使用しなければならないため、現在、二人の会社はオアフ島にのみ花を卸している。ブロダー・ヴァン・ダイクさんの家族は、1987年にこの土地を購入した。心に訴えかける魅力に満ちた場所であったという。それ以来、彼女の両親は、侵略的な外来種の植物によって固有種が追いやられ、荒れ放題だった裏庭の自然林の修復に取り組んだという。
ブロダー・ヴァン・ダイクさんは、彼女が幼少時代を過ごしたこの家に2013年、リットソンさんと戻ってきた。以来、30年前に両親が始めた仕事を二人で引き継いでいる。外来植物の除去にも農薬の使用は避け、代わりに手やチェーンソーで根こそぎ取り除く。二人は、家を包み込む深い森の中の植物を詳しく調べるうちに、古代から生き延びた固有種も発見した。「本当に頭が下がる気分さ。ここで起こったことをすべて目のあたりにして、今もここにいると思うと、とても感慨深いものがあるよ」とリトソンさん。
2017年、挙式することになった二人は、結婚式で使う花を全て自分たちの庭から調達することにした。「私たちにとって特別な意味が あると思ったの。私たちがこれまで関係を築いてきた花たちを使いたくてね」とブロダー・ヴァン・ダイクさん。プロのビジュアルアーティストのリトソンさんは、庭から引っこ抜いた外来種のストロベリーグアバの木を使って、フッパー(ユダヤ教の結婚式で使う天蓋)を作り、隅々にモンステラの葉と鮮やかなアンスリウムを飾った。レセプションは、緑の葉 に深紅のトーチジンジャーと金色のラトルスネークフラワーを組み合 わせた豪華なトロピカルアレンジメントで飾られ、ゲストへの引き出物には、二人の育てた切花のブーケを用意した。
自分たちが育てた花をゲストがとても喜んでくれたことに感銘を受けた夫婦は、頻繁に庭の花を収穫し、友人たちとシェアするようになり、その代わり友人たちは、イベントに使うフラワーアレンジメントの手配を二人に依頼するようになった。「これが僕たちがタンタラス・ボタニカルズを始めたきっかけなんだ」とブロダー・ヴァン・ダイクさんは語る。
裏庭の植物を入念に世話する二人にとって、庭仕事は芸術作品の創作活動に似ているという。「自分たちの手で作り上げた彫刻のマスターピースよ」と誇らしげだ。
ヘリコニアの植わっている場所から、ブロダー・ヴァン・ダイクさんが「一年中バナナを育てることに夢中になっていた」という、彼女の父が植えた沢山のバナナの木が、花を咲かせているのが見えた。庭の向こうには、背の高い葉の間から美しいトーチジンジャーの花が顔を覗かせている。石段を登ると、赤く染まった繊細なアンスリウムが山風に気持ち良さそうに揺れていた。
「タンタラス・ボタニカルズ」の ミシェル・ブロダー・ヴァン・ダイクさんとクリス・リットソンさん は、庭仕事は芸術作品の創作活動に似ているという。
「花に待つことの大切さを教わりました。2年間毎日世話をして、 心待ちにしていた花がやっと咲いたとき、深い感謝の気持ちが生まれます」とタンタラス・ボタニカルズのミシェル・ブロダー・ヴァン・ダイクさん。
二人は、保存料を使用せず、 注文を受けた日に花を収穫するので、デリケートな切花を提供することができる。
フラワーアレンジメントの注文も受ける。
ミシェル・ブロダー・ヴァン・ダイクさんとクリス・リットソンさんにとって、ガーデニングブーツを履いて、裏庭で花の手入れすることが毎朝の日課だ。タンタラス山として知られ、曲がりくねった坂道とそこから望むホノルルのダウンタウンの景色で有名なオアフ島にある山、「プウ・オヒア」の頂上にある二人の庭は 、裏庭というよりもエデンの楽園と呼ぶにふさわしい、珍しい花々や豊かな果樹で彩られた6エーカーの自然林だ。
私が訪れた朝は、収穫日だった。私たちは、二人が飼っているミニチュアハウンドとビーグルの雑種犬、コレアとともに、バケツ6個を手に提げて、ヘリコニアの咲く場所までハイクした。清々しい空気の中、朝露の雫が鮮やかなオレンジ色をしたヘリコニアの花弁に輝やいている。 ブロダー・ヴァン・ダイクさんは「私のベビーたちと呼んでいるのよ」と微笑みながら、咲いているヘリコニアの茎を切り、ブーケに束ねていく。「ヘレコニアは一年中花が咲くわ。だからいつ来てもこうやって迎えてくれて、幸せな気分にしてくれるの」。
二人は「タンタラス・ボタニカルズ」という会社名で、地元の花屋にトロピカルフラワーを卸している。フラワーアレンジメントの注文も受ける。自然環境に近い持続可能な方法で花を栽培する二人の会社は、 現代の花産業において希少な存在だ。「花産業というのは、実はものすごい量の廃棄物が出る産業のひとつなんだ」。リットソンさんいわく、この業界では一般的に、プラスチック、ホルムアルデヒドフォーム、殺虫剤、除草剤、さらには新鮮に見せるための人工着色料などが広く使用されているのだという。「地球に育った花を楽しんでいるだけのつもりが、実際にはそれと引き換えに、生態環境への負担という大きな代償を払っているんだ」。
タンタラス・ボタニカルズでは、保存料を使用しないため、注文を受けた日に花を収穫する。「僕たちが他の業者とは違うのはそこなんだ。だから他では手に入らない、寿命の短くてデリケートな切花を提供することができるのさ」とリトソンさんは説明する。他の島に花を送るには、殺虫剤を使用しなければならないため、現在、二人の会社はオアフ島にのみ花を卸している。
ブロダー・ヴァン・ダイクさんの家族は、1987年にこの土地を購入した。心に訴えかける魅力に満ちた場所であったという。それ以来、彼女の両親は、侵略的な外来種の植物によって固有種が追いやられ、荒れ放題だった裏庭の自然林の修復に取り組んだという。
ブロダー・ヴァン・ダイクさんは、彼女が幼少時代を過ごしたこの家に2013年、リットソンさんと戻ってきた。以来、30年前に両親が始めた仕事を二人で引き継いでいる。外来植物の除去にも農薬の使用は避け、代わりに手やチェーンソーで根こそぎ取り除く。二人は、家を包み込む深い森の中の植物を詳しく調べるうちに、古代から生き延びた固有種も発見した。「本当に頭が下がる気分さ。ここで起こったことをすべて目のあたりにして、今もここにいると思うと、とても感慨深いものがあるよ」とリトソンさん。
2017年、挙式することになった二人は、結婚式で使う花を全て自分たちの庭から調達することにした。「私たちにとって特別な意味が あると思ったの。私たちがこれまで関係を築いてきた花たちを使いたくてね」とブロダー・ヴァン・ダイクさん。プロのビジュアルアーティストのリトソンさんは、庭から引っこ抜いた外来種のストロベリーグアバの木を使って、フッパー(ユダヤ教の結婚式で使う天蓋)を作り、隅々にモンステラの葉と鮮やかなアンスリウムを飾った。レセプションは、緑の葉 に深紅のトーチジンジャーと金色のラトルスネークフラワーを組み合 わせた豪華なトロピカルアレンジメントで飾られ、ゲストへの引き出物には、二人の育てた切花のブーケを用意した。
自分たちが育てた花をゲストがとても喜んでくれたことに感銘を受けた夫婦は、頻繁に庭の花を収穫し、友人たちとシェアするようになり、その代わり友人たちは、イベントに使うフラワーアレンジメントの手配を二人に依頼するようになった。「これが僕たちがタンタラス・ボタニカルズを始めたきっかけなんだ」とブロダー・ヴァン・ダイクさんは語る。
裏庭の植物を入念に世話する二人にとって、庭仕事は芸術作品の創作活動に似ているという。「自分たちの手で作り上げた彫刻のマスターピースよ」と誇らしげだ。
ヘリコニアの植わっている場所から、ブロダー・ヴァン・ダイクさんが「一年中バナナを育てることに夢中になっていた」という、彼女の父が植えた沢山のバナナの木が、花を咲かせているのが見えた。庭の向こうには、背の高い葉の間から美しいトーチジンジャーの花が顔を覗かせている。石段を登ると、赤く染まった繊細なアンスリウムが山風に気持ち良さそうに揺れていた。
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