Rain beyond a jalousie window
愛しの雨

200種類以上の雨を表す言葉や表現を持つハワイアンの人たち

マシュー・デニーフ
写真
ジョン・フック & カイノア・レポンテ

ハワイでは毎日のように降る雨。ハワイ語 で「ウア」と呼ばれる雨は、ハワイに住む人たちにとっては日常茶飯事であり、むしろ歓迎すべきものである。島を訪れる旅行者(マラヒニ) にとっては、予期しない雨はせっかくの楽しい旅行を台無しにしてしまうものと思うかもしれないが、ハワイ文化にとって雨がいかに尊いものであるかを知れば、ハワイに降る雨の美しさに気づき、親近感すら覚えることだろう。

崖の斜面を流れ落ち、虹のように色を変え、あらゆる地形に様々な姿や強さで降り注ぐ雨。ハワイアンの人たちは、雨とその繊細な魅力を尊いものとして捉えている。それはハワイ諸島に降る雨を形容する言葉がハワイ語には200種類以上もあることをみても明らかだ。これらの言葉は最近では『ハナウ・カ・ウア:ハワイアンの雨の名前』という一冊にまとめられている。それはメレ(歌)、オリ(チャント)、モオレロ( 伝説)、オレロノエアウ(ことわざ)や口頭伝承に基づく雨にまつわる記述を集めたデータベースである。著者のコレット・レイモミ・アカナさんと共同研究者のキエレ・ゴンザレスさんはこの本を通じて、ネイティブハワイアンの文化と雨の微妙なニュアンスを持った密接な関係について明らかにしている。

ホテルのラナイから外を眺めて近くの谷に雨雲を見つけた時や、ワイキキの街を歩いていて穏やかな霧雨に包まれた時には、ホノルルの雨の名前を思い出してほしい。ハワイの雨の名前やその背景にある物語や意味を知れば、滞在中雨に遭遇したとしても、これまでとは違った優しい気持ちで受け入れることができるであろう。

シェアする
Rain beyond a jalousie window
ココ
虹の出現と同時に降る雨や川を泥だらけの赤褐色に変える豪雨を「コ
コ」と呼ぶ。ハワイ語で赤色を指す「ウラ」 は、ハワイ文化では強い力を
持っている。ウラが自然に現れるときハワイアンの人々はそこに深い意
味を見出す。「ココウラ」(虹に見られるような赤いネットワーク)や「ウラココ」(血のように赤い雨)とも呼ばれるこの雨は、王族や神聖なものの
象徴であり、司祭たちはココを神からのお告げとして捉え、虹は酋長の
出生あるいは死の前兆であると解釈していた。
ナーウル
ハワイ全土が快晴に見えるときでも、突然雨が降り出すことがある。ハワイアンの人たちはこのように突如として降り出すシャワーを「ナーウル」と呼ぶ。この言葉は突然の激しい雨を生み出す風や嵐雲にも用いられる。
リリレフア
「レフアの花の冷たさ」や「レフアの花の小さな雫」といった意味のこの雨は、カイムキの山側にある静かな住宅地のパロロに降る。リリレフアは、谷に沿ってひんやりと降る霧雨で、「心を癒し、感傷的にさせる雨」と歌われている。神話によるとこの雨の名前は、パロロに住んでいた美しい女性にちなんでつけられたという。伝説のトカゲのモオは、リリレフアを愛していたが、彼女は別の男と恋に落ちた。嫉妬深いモオはリリレフアを雨に変え、ワイアラエ通りを越えて決して外へ出ることができないようにしたという。
クアヒネ
この雨はもともとマノアのエリアと関係していることが多い。滞在中、マノアを訪れなかったとしても、ハウス ウィズアウト ア キーでハワイアン音楽を聴いていてこの言葉を耳にすることがあるかもしれない。マノアについて歌った多くの曲に出てくるからだ。歌詞やメロディーは美しく聞こえるが、その名に秘められた古代の伝説は悲劇である。女酋長のクアヒネには美しい娘がいた。その娘は常に噂の的で、男性たちは彼女と関係を持ったことをしばしば自慢していた。その噂を聞いた娘の恋人は彼女を殺してしまい、悲しみにくれたクアヒネは雨に姿を変えたというものだ。
ポオヌイ
詩はさておき、ハワイアンの人たちですら疎ましく思う雨があったようだ。ポオヌイとは厄介な激しい雨を指す。「大きな頭」という意味のこの言葉は、冷たくて指先が麻痺し、背
筋に寒気が走るような不快な雨を指す。
ヴァアヒラ
その名の通り、この雨はマノア渓谷とパロロ渓谷の間にある尾根、ヴァアヒラに降る雨である。ホノルルの近隣地区のジャッド通りやウィリー通りまで達することもある。優しく一面に広がって降るのがこの雨の特徴だ。今度そんな雨を体験したら、ワイキキを舞台にこの雨を歌った歌があることを思い出してほしい。ハワイアンの作家のホオウルマヒエヒエは詩の中で、ヴァアヒラを「天からの毛布」や「光へと導く溢れる愛」などと表現している。
ハーアオ
ヌウアヌのアフプアア(古代ハワイの土地区分)には、連続的な雨が降る。強い雨と弱い雨が交互に一定のパターンを繰り返して降るこの雨には、酋長の後を歩く宮廷の側近を指す「ハーアオ」という名前がつけられている。連続的なこのパターンは、ウアハーアオ、またはナオウアハーアオと呼ばれ、樹皮から作られる布、カパのデザインにも取り入れられている。
ヴァアヒラ
その名の通り、この雨はマノア渓谷とパロロ渓谷の間にある尾根、ヴァアヒラに降る雨である。ホノルルの近隣地区のジャッド通りやウィリー通りまで達することもある。優しく一面に広がって降るのがこの雨の特徴だ。今度そんな雨を体験したら、ワイキキを舞台にこの雨を歌った歌があることを思い出してほしい。ハワイアンの作家のホオウルマヒエヒエは詩の中で、ヴァアヒラを「天からの毛布」や「光へと導く溢れる愛」などと表現している。
ハーアオ
ヌウアヌのアフプアア(古代ハワイの土地区分)には、連続的な雨が降る。強い雨と弱い雨が交互に一定のパターンを繰り返して降るこの雨には、酋長の後を歩く宮廷の側近を指す「ハーアオ」という名前がつけられている。連続的なこのパターンは、ウアハーアオ、またはナオウアハーアオと呼ばれ、樹皮から作られる布、カパのデザインにも取り入れられている。
その他のストーリー