カメハメハ・バタフライの卵は、宇宙人の惑星のようだ。12本の筋が規則正しく入った玉虫色で球状をした卵は、ママキの葉の裏側にぶら下がり、キラキラと光り輝やいている。この美しい卵が人の目につくほどの大きさだったなら、宇宙から来たのではと疑われるに違いない。 実はこの卵は、人類よりずっと前からハワイに住んでいる数少ない“ローカル”の蝶の卵なのだ。
ハワイには、6,000種を超える固有の昆虫種が生息している。この島で独自に進化を遂げ、他のどこにも存在しない小さくて魅惑的な生き物たち。その中には、背中に絵文字スマイルの模様が入ったハッピー・フェイス・スパイダーや、ピクチャー・ウィング・フライという奇妙なハエの大群、一部の溶岩洞にのみ生息する盲目の蜘蛛、ノーアイ・ビッグ アイ・ウルフ・スパイダーなどがいる。これらの珍しい生き物をはじめ、ハワイには多くの固有の蛾が生息しているが、ハワイ固有種の蝶(プレレフア)は実はわずか2種類しか存在しない。
蝶は、細かい鱗粉のついた羽で、気の遠くなるほど遥かな距離を移動できる驚くべき飛行能力を持つ生物だ。そんな蝶にとってすら、太平洋はあまりに大きな地理的な障壁であったに違いない。人類がハワイに到達する数百万年前、たった2種の蝶が太平洋の孤島のハワイ諸島に辿りつき、繁栄した。古代に海を渡った蝶がアジアから来たのか、 北アメリカから飛んで来たのかは未だ謎である。チョウ目の開拓者たちはこの島で何世紀もかけて、極めてユニークな生き物へと進化を遂げた。
ブラックバーンズ・ブルーとも呼ばれるコア・バタフライ(学 名:Udara blackburni)は、幅2.5センチの翼とひょうきんな顔、膨らんだ目、白黒の縞模様の触覚を持った小さな蝶だ。普段は翼を垂直に保ち、淡いアクアマリンをした羽の下面を見せている。その名前の通り、この蝶はコアの木とともに成長する。幼虫はコアの葉を食べ、成虫になる とコアの蜜をすう。コア・バタフライは、餌となる花を見つけると、コイル状になった口吻を広げて、花の奥深くにストローのように差し込んで飲 む。運良く飛んでいるコアバタフライに遭遇したら、そのビロードのように美しい羽の上面の鮮やかな青色に魅せられることだろう。
あまり一般的ではないが、より有名なのはアカタテハ属に属するカメハメハ・バタフライである。アカタテハ属とは、世界中で見られ るペインテッドレディーやアドミラルといった20種におよぶ鮮やかな色の羽をしたタテハチョウ科の蝶のグループを指す。学名のVanessa tameameaは、ハワイで最も有名なカメハメハ王室(この種が最初に記録された1878年には、カメハメハはタメアメアと綴られることもあった)にちなんで名付けられた。この蝶の翼の上面は明るいオレンジと黒で、白やオレンジの斑点がある。下面は、森の下層に合わせて緑と茶色のカモフラージュになっている。
まるで銀河系からやってきたような卵から生まれるカメハメハ・ バタフライの幼虫は、淡い緑色をしていて、主にママキのようなハワイ固有のイラクサ科の植物を餌とし、住まいとする。幼い幼虫は、葉を三日月 形に切り抜いて、折り込んだ部分を絹糸で留め、テントのようなシェルターを作る。ママキの葉でお腹が満たされるとサナギに変身し、やがて成虫に成長する。
カメハメハ・バタフライの成長過程は、実に神秘的だ。この蝶種を研究する昆虫学者のウィル・ヘインズ氏は、2014年にカメハメハ・バタフライの個体数と生息場所を調査する仕事を受けた。彼はポータブルな昆虫研究所を作り、屋外に蝶かごを設置して、一般の科学者たちが目撃した蝶をオンラインで記録できるプレレフア・プロジェクトを起動した。
カメハメハ・バタフライが減少していることがわかると、ヘインズさんとハワイ大学院生のコルビー・マエダさんはその原因を探り、その過程でハワイの蝶を飼育により繁殖させる方法も見いだした。「彼らには自然光が必要です」とヘインズさんは言う。「夕方に交尾するカメハメハ・バタフライは、日没の頃になると活発になり、互いを追いかけ始めます」。交配したメスの蝶は、月に500個もの卵を産むこともあるという。
それでも島に持ち込まれたアリや鳥による捕食に、繁殖数が追いついていないのが現状だ。かつて山頂から海面まで生息していたカメハメハ・バタフライは、今では原生林以外の場所で見つけるのは至難の技となっている。ヘインズさんは、新たに交配させる蝶を捕まえるのに、香りのする樹液がにじみ出ている古いコアの木を使う。カメハメハ・バタフライにとっては、まさに猫にマタタビで、蝶の群れがその樹液に集まり、発酵した発砲酒を飲んで、ほろ酔い状態になるのだそうだ。
ハワイの蝶の個体数は、人間の助けを借りれば、再び増える可能性がある。自宅に庭のあるガーデナーは、コアとアアリイというコア・バタフライが好む固有種の植物を育てることで貢献できるからだ。「植えれば、彼らは必ずやってくるでしょう」とヘインズさんは言う。
2009年、パールリッジ小学校の5年生グループは、ハワイ州議員にカメハメハ蝶を州公式の昆虫に指定するよう請願した。子供たちの要望を優先するか、幸せ顔のクモを選ぶを議論の末、州議会は蝶を選んだ。以来、王家ゆかりの蝶とその保護活動について人々の関心が集まり、現在ではハワイに住む人々が森を訪れる時には、オレンジと黒の羽 をした蝶を探すようになったほど認知されるようになっている。
人間の手を借りてハワイの蝶は個体数を増やしつつある。
玉虫色をした珍しいカメハメハ・バタフライの卵。この蝶の目撃情報は、ctahr.hawaii.edu/ pulelehuaに記録されている。 写真は、プレレフアプロジェクト提供。
Vanessa tameameaという学名を持つカメハメハ・バタフライは、 ハワイで最も有名なカメハメハ王朝にちなんで名付けられた。
地元の環境保護団体による再生活動のおかげで、地元の人たちの毎日の食卓にリムがふたたび並ぶ日も近いかもしれない。
カメハメハ・バタフライの卵は、宇宙人の惑星のようだ。12本の筋が規則正しく入った玉虫色で球状をした卵は、ママキの葉の裏側にぶら下がり、キラキラと光り輝やいている。この美しい卵が人の目につくほどの大きさだったなら、宇宙から来たのではと疑われるに違いない。 実はこの卵は、人類よりずっと前からハワイに住んでいる数少ない“ローカル”の蝶の卵なのだ。
ハワイには、6,000種を超える固有の昆虫種が生息している。この島で独自に進化を遂げ、他のどこにも存在しない小さくて魅惑的な生き物たち。その中には、背中に絵文字スマイルの模様が入ったハッピー・フェイス・スパイダーや、ピクチャー・ウィング・フライという奇妙なハエの大群、一部の溶岩洞にのみ生息する盲目の蜘蛛、ノーアイ・ビッグ アイ・ウルフ・スパイダーなどがいる。これらの珍しい生き物をはじめ、ハワイには多くの固有の蛾が生息しているが、ハワイ固有種の蝶(プレレフア)は実はわずか2種類しか存在しない。
蝶は、細かい鱗粉のついた羽で、気の遠くなるほど遥かな距離を移動できる驚くべき飛行能力を持つ生物だ。そんな蝶にとってすら、太平洋はあまりに大きな地理的な障壁であったに違いない。人類がハワイに到達する数百万年前、たった2種の蝶が太平洋の孤島のハワイ諸島に辿りつき、繁栄した。古代に海を渡った蝶がアジアから来たのか、 北アメリカから飛んで来たのかは未だ謎である。チョウ目の開拓者たちはこの島で何世紀もかけて、極めてユニークな生き物へと進化を遂げた。
ブラックバーンズ・ブルーとも呼ばれるコア・バタフライ(学 名:Udara blackburni)は、幅2.5センチの翼とひょうきんな顔、膨らんだ目、白黒の縞模様の触覚を持った小さな蝶だ。普段は翼を垂直に保ち、淡いアクアマリンをした羽の下面を見せている。その名前の通り、この蝶はコアの木とともに成長する。幼虫はコアの葉を食べ、成虫になる とコアの蜜をすう。コア・バタフライは、餌となる花を見つけると、コイル状になった口吻を広げて、花の奥深くにストローのように差し込んで飲 む。運良く飛んでいるコアバタフライに遭遇したら、そのビロードのように美しい羽の上面の鮮やかな青色に魅せられることだろう。
あまり一般的ではないが、より有名なのはアカタテハ属に属するカメハメハ・バタフライである。アカタテハ属とは、世界中で見られ るペインテッドレディーやアドミラルといった20種におよぶ鮮やかな色の羽をしたタテハチョウ科の蝶のグループを指す。学名のVanessa tameameaは、ハワイで最も有名なカメハメハ王室(この種が最初に記録された1878年には、カメハメハはタメアメアと綴られることもあった)にちなんで名付けられた。この蝶の翼の上面は明るいオレンジと黒で、白やオレンジの斑点がある。下面は、森の下層に合わせて緑と茶色のカモフラージュになっている。
まるで銀河系からやってきたような卵から生まれるカメハメハ・ バタフライの幼虫は、淡い緑色をしていて、主にママキのようなハワイ固有のイラクサ科の植物を餌とし、住まいとする。幼い幼虫は、葉を三日月 形に切り抜いて、折り込んだ部分を絹糸で留め、テントのようなシェルターを作る。ママキの葉でお腹が満たされるとサナギに変身し、やがて成虫に成長する。
カメハメハ・バタフライの成長過程は、実に神秘的だ。この蝶種を研究する昆虫学者のウィル・ヘインズ氏は、2014年にカメハメハ・バタフライの個体数と生息場所を調査する仕事を受けた。彼はポータブルな昆虫研究所を作り、屋外に蝶かごを設置して、一般の科学者たちが目撃した蝶をオンラインで記録できるプレレフア・プロジェクトを起動した。
カメハメハ・バタフライが減少していることがわかると、ヘインズさんとハワイ大学院生のコルビー・マエダさんはその原因を探り、その過程でハワイの蝶を飼育により繁殖させる方法も見いだした。「彼らには自然光が必要です」とヘインズさんは言う。「夕方に交尾するカメハメハ・バタフライは、日没の頃になると活発になり、互いを追いかけ始めます」。交配したメスの蝶は、月に500個もの卵を産むこともあるという。
それでも島に持ち込まれたアリや鳥による捕食に、繁殖数が追いついていないのが現状だ。かつて山頂から海面まで生息していたカメハメハ・バタフライは、今では原生林以外の場所で見つけるのは至難の技となっている。ヘインズさんは、新たに交配させる蝶を捕まえるのに、香りのする樹液がにじみ出ている古いコアの木を使う。カメハメハ・バタフライにとっては、まさに猫にマタタビで、蝶の群れがその樹液に集まり、発酵した発砲酒を飲んで、ほろ酔い状態になるのだそうだ。
ハワイの蝶の個体数は、人間の助けを借りれば、再び増える可能性がある。自宅に庭のあるガーデナーは、コアとアアリイというコア・バタフライが好む固有種の植物を育てることで貢献できるからだ。「植えれば、彼らは必ずやってくるでしょう」とヘインズさんは言う。
2009年、パールリッジ小学校の5年生グループは、ハワイ州議員にカメハメハ蝶を州公式の昆虫に指定するよう請願した。子供たちの要望を優先するか、幸せ顔のクモを選ぶを議論の末、州議会は蝶を選んだ。以来、王家ゆかりの蝶とその保護活動について人々の関心が集まり、現在ではハワイに住む人々が森を訪れる時には、オレンジと黒の羽 をした蝶を探すようになったほど認知されるようになっている。
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